大槻 和弘さん(22期・公務員)
(22期・公務員)
大学 農学部 卒
大学院 理学系研究科 博士課程
自治体の農業関係の技術系公務員
奨学会を知った経緯
私は平成21(2011)年度、22期奨学生として山田長満奨学会にお世話になりました。元々祖父母の農業を手伝って子供の頃を過ごして、農業への興味を持った私は、学部時代に農学部で植物が病気からどうやって身を守っているのか(植物の防御応答)について学びました。植物をより深く理解するために、大学院では理学系研究科で植物の細胞が分化する仕組みや細胞壁が作られる仕組みについて研究をしました。当時大学院で修士課程から博士課程へ進学を考えており、たまたま次年度奨学生の募集案内を大学の掲示板で見て奨学会の存在を知りました。
奨学会に参加して
奨学会の同期は、数学・国際関係・美術・文学・女性問題など幅広く、世界中で活躍している同期に囲まれ、周りの活躍がとても新鮮でまぶしく見えました。大学では同じ学部や専攻の知人が多く、自分と全く異なる分野の話に触れる機会が少ないと思います。奨学会では毎月同期や先輩と話す交流会があり、それぞれが大学で今学んでいることや興味のあること、社会人として取り組んでいることについて刺激的な話を聞くことができます。また、自分自身の勉強や研究について1時間同期の前でプレゼンする機会もあり、専門外の人にわかりやすく説明するための経験を積むことができます。私のプレゼンでは、生物の遺伝の話や作物の品種改良の話、食料問題の話などをし、市販されているお米の食べ比べを同期にしてもらい、消費者には見えない研究の部分や農業、食料生産について考えてもらいました。
現在は
長かった学生生活を終え、今年(2014年)の3月から自治体の農業関係の技術系公務員として働いております。自治体の農業職は、①現場で農家と接し経営の様々な相談に乗る普及活動、②現場で活用できる技術や新たな品種を開発する試験研究、③地域の農業を持続的に発展させるための施策を考える行政など、幅広い仕事に関われることが魅力だと感じて就職を決めました。現在は農業改良普及センターという普及活動を担うセクションに勤務しています。事務所の担当地域は有数の野菜の産地で、大規模経営が展開されており、実験室とのスケールの違いに日々驚いています。これまで現場の経験がほとんどなかったので分からないことが多く、職場の先輩に迷惑をかけることもありますが、職場や現場農家に育てられていることを実感しております。普及指導員という仕事は、現場と距離が非常に近く自由に動き回れる強みを生かし、現場農家の栽培技術支援にとどまらず、産地の育成や生産者と地域産業、流通、食品加工などあらゆる関係者を巻き込んで新たな需要の開拓やネットワークを構築するようなことも増えており、人を相手にいろいろな可能性を広げられる面白い仕事だと感じています。私も地域の農業の発展に貢献できるように早く一人前の職員になりたいと思います。
当時を振り返って
私は学生生活を長く送ることができ、自分の進路についてじっくり考える機会を得ることができました。奨学会がなければ今の自分はなく、全く異なる進路を選択していたかも知れません。奨学会、同期の友人には本当に感謝しています。
これから奨学会への応募を考えている方へ
山田長満奨学会では、単に学業の経済的な支援を受けられるだけでなく、自分と全く異なる世界に触れ、幅広い分野の友人と知り合えるチャンスがあります。昨年度(2014年度)の活動では、OBの現在の仕事について話を聞く機会もありました。進路に悩んでいる方にとっても、自分の選択肢や世界を広げるきっかけや気づきを得ることができることでしょう。奨学会を通して自分が学びたいことや、将来なりたい自分の姿や、現在抱いている疑問や、自分の思いなどを思い切りぶつけてみてください。